たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(547冊)安藤俊介『はじめてのアンガーマネジメント実践ブック』☆☆

一番気に入ったことば「自分の感情に責任を持つ」

 

感情的になることは社会人として戒められることのように思われますが、実際の社会生活、仕事の上では感情抜きで理性的に他者とやりとりするのは理想論です。

 

怒りのみならず、哀しみや苦しみといったネガティブな感情は勿論、楽しみや喜びといったポジティブ感情も、社会の中で度が過ぎる表現をしたら「異常」とみなされます。

 

度が過ぎる、というのは程度(強度)の問題だけでなく、持続性や頻度、外的要因から受ける刺激に対する耐性も問題になります。

 

さて、この本はいくつか示唆に富む内容も含み、最後のアンガーマネジメントの内容40pは役に立つとも思いましたが、「怒りのタイプ」や「怒りの傾向」については内容が薄いように感じました。ビジネス書故でしょうか。

 

怒りのタイプ分けは、根拠が示されてないし、誰でも当てはまるようなバーナム効果を狙ったもののように思えました。

 

怒りの傾向についても、豊臣秀吉が怒りの程度が高い人物などと、歴史上の人物を当てはめていますが、それってあくまでその人の一部を抜粋したに過ぎないでしょうとつっこみたくなりました。

 

著者はアンガーマネジメント協会の代表理事と肩書がありますが、この書籍の内容ではアンガーマネジメント自体が胡散臭い、内容の薄い、信用できないものであると示しているように思え、残念に思いました。

 

アンガーマネジメントについては、エビデンスが認められる認知行動療法を基にした著書があるので、そちらを参考にした方がよいと思います。