たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(577冊目)平木典子『三訂版アサーション・トレーニング さわやかな〈自己表現〉のために』☆☆☆☆

一番気に入ったことばアサーション権」

 

この本によると、主なアサーション権は5つあります。

 

アサーション権Ⅰ

私たちは、誰からも尊重され、大切にしてもらう権利がある。

 

アサーションでは、自分も相手も大切にする、自分の意見(欲求)も相手の意見(欲求)も大切にします。自分を大切にしないと自己犠牲的になり「非主張的」コミュニケーションになってしまいます。逆に相手を大切にできないと「攻撃的」になります。自分も相手も尊重し、大切にするのが「アサーティブ」です。

 

アサーション権Ⅱ

私たちは誰もが、他人の期待に応えるかどうかなど、自分の行動を決め、それを表現し、その結果について責任をもつ権利がある。

 

自分がどんなふうに自分が感じ、どう考え、どのような行動をするか、それは自分自身で決めることができ、その結果については自分自身が責任をもつ。

これは逆に見ると、他者も自分の行動を決める権利をもっていることになり、相手を自分の思うように操作することはできないし、また、自分で決めた行動の責任は自分で負う、ということになります。

 

アサーション権Ⅲ

私たちは誰でも過ちをし、それに責任をもつ権利がある。

 

これは「人間である権利」とも言われるそうです。失敗しない、過ちを犯さない人はいません。リスクマネジメントも大事ですが、失敗や過ちのあったときはそれを償う権利もあると考えます。ただし、償いきれない過ちもあります。その場合は完璧な償いが求められるのではなく、その責任を本人が負うと考えます。なかなか難しいですが、他者の失敗や過ちを「赦す」ことができるのも人間らしさではないでしょうか。

 

アサーション権Ⅳ

私たちには、支払いに見合ったものを得る権利がある。

 

物だけではなく、サービスにおいても、この権利は行使できます。買ったものが不良品であれば返品・交換してもらえますし、サービスにおいては、自分の要求や質問を伝えてよいのです。ただし、その際に攻撃的に伝えることの無いよう気を付けなければいけません。

 

アサーション権Ⅴ

私たちには、自己主張をしない権利もある。

 

アサーションとは「主張しなければならない」わけではなく、主張するかしないかについても自分で選択できるし、その責任を自らにおくことができると考えます。仮に「非主張的」だとしても、その行動に自らが満足し責任を負うことができるのであれば、それでいいのです。

 

…他にも「一人になりたいとき、一人になる権利」や「他人と違う権利」など、自分と他者を大切にする考え、つまりアサーティブになることがアサーション・トレーニングの目的です。