(505冊目)うちyマ登紀夫『本当のTEACCH 自分が自分であるために』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「自分が自分であるために」

 

TEACCHは、Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped CHildrenの略語です。日本語に訳すと、自閉症とそれに関連するコミュニケーション障害をもつ子どもの療育です。

 

この本ではTEACCHの理念・哲学から基本、アメリカのTEACCHセンター他での療育を学べます。

 

療育に携わる者なら一度は聞いたことがあるTEACCHですが、恥ずかしながら概要しか知らなかったため中身をしっかり学ぶために読んでみました。

 

また、この本で学んだ歴史ある療育モデルを発展途上である私の会社でも取り入れていくために、理想的な療育のためのプログラムや構造化、道具、人員といった力を入れるべきとこを上司に理解してもらうための資料作りにも役立てました。

 

THACCHは療育の現場だけでなく、教育・福祉の現場でも取り入れている所があるので、THACCHの中身を知らないけれど、スケジュールをパネルシートで提示したり、教室に個別の学習スペースを複数用意するなど、現場の視覚的・物理的構造化に役立てている所もあります。

 

どの程度構造化するかは各施設に任されるところですが、なぜ構造化するのか、といったTHACCHの基本は押さえておきたいものです。

 

なぜなら、TEACCHはあくまで自閉症(自閉スペクトラム症)を対象として発展してきた療育方法なので、ADHDやLDの支援方法としては合わない部分もあるからです。

 

改めて全体像を学んで、応用行動分析、行動療法の考え方も主軸に取り入れられているなと思いました。

 

私の依拠する療育技法は応用行動分析(ABA)ですが、THACCHも学ぶことで各々の事業所や子どもの特性に合わせたよりよい支援を行っていきたいと思っています。

 

 

 

(504冊目)木村順『育てにくい子にはわけがある 感覚統合が教えてくれたもの』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「「親」の役割と「職員」の役割」

 

 

著者は述べます。「『職員』は、『親』の立場には立てないし、立ってはいけない」と。

 

『職員』は嫌になったら仕事を辞めることができるが、『親』は子育ての義務から逃れられない。

『職員』は給料をもらっているが、『親』は無給で働いている。

『親』は無資格、無試験でなれるから、我が子を可愛く思う義務はないし、子育てが下手でもいい(子育てをしていれば基本的な義務は果たしている)。

『職員』は正しく保育・教育・療育をしていく義務がある。そのために「発達的視点」や「療育的視点」を学んでいく努力が必要になる。

『親』は自分の個性に合った自分らしい子育てをしていく権利がある(親の数だけ育て方がある)。

『親』は楽しく子育てに向かうためのアドバイスを受ける権利がある。

『職員』は「親指導」ではなく「親支援」を行う義務がある。

 

私の会社でも親支援ではなく、親指導をしようとする職員がいます。

ああしたほうがいい、こうしたほうがいいと教えることが正しいと思っているのでしょう。

私は、親の養育が不十分なとき、あるいは家庭で療育、療育的関わりを行ってもらう場合、まずは親御さんがどのような困り感を持っていて、どんなことをやっていて、どのようなことならできるのかを聞き取りながら情報を提供します。

 

この本は感覚統合療法の基本的な考えを理解することができます。また、5章の「教育・保育・療育現場の方々へ」は著者から支援者へのアドバイスが沢山載っています。発達障害を抱える子に関わる教育・保育・療育に携わる方々に読んでもらいたい一冊です。

 

 

 

 

(503冊目)杉山登志郎・辻井正次(監)『発達障害のある子どもができることを伸ばす学童編』☆☆☆

一番気に入ったことば「「学習できない」のではなく「違う学び方が必要な子」」

 

学童期の発達障害を抱える子への配慮について非常にコンパクトにまとめられています。

発達障害の捉え方、子どもとの関わり方の基本から、身辺自立、問題行動への対応、ソーシャルスキル、感情コントロール、学習面等、発達障害を抱える学童期の子の全体像を学ぶことができます。

僅か100ページ程の本ですが基礎知識としては必要十分なものが得られるでしょう。私はこのような本で基礎の振り返りを行っています。

この本を土台として、問題行動への対応やソーシャルスキル等、各人が必要とする知識・技術に関する本にあたるのが良いかと思います。

 

発達障害のある子どもができることを伸ばす! 学童編

発達障害のある子どもができることを伸ばす! 学童編

  • 発売日: 2011/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

(502冊目)ジェド・ベイカー(著)竹迫仁子(訳)『おこりんぼうさんのペアレント・トレーニング』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「まず、おとなが自分自身の気分をコントロールできるようになりましょう」

 

この本は主に養育者向けに、ABA(応用行動分析)を基盤とした子どもの困った行動への対処法を述べたものです。

 

この本の「はじめに」では、情緒に問題のある子に対して、大人が陥りがちな考えとして、わかっているのにやりたがらないだけだから厳しく躾けるというのは間違っていると述べています。

 

私が会社の内部研修を行った際、「(罰のデメリットをつたえても)私は怒ることをやめない」と言った人や「(効果的でない養育方法について)今のやり方を変えない」と言った人がいます。

そのような人になぜと聞くと、たいてい「私は怒られて学んできたことが自分にとって良かったと思う」や「今のやり方でうまくいっている(あるいは失敗していない)」と言うのです。

 

そこで私は議論をやめてしまうのです。というのは自分が間違っていないと思う人は、他者から学ぼうとせず、自分の主観的経験が全てなので、これ以上説得しようとしても意味がないと思うからです。

本当は「あなたは定型発達ですよね?」とか「今怒鳴りつけて黙らせることは、将来の非行・犯罪少年を作り上げることですよ」とか「なぜ子どもの気持ちになって考えることができないのか」とかとか言いたくなるのですが、きっとそんなことを言っても上記のような人には届かず、単に私に対する心象が悪くなるだけでしょう。

 

もちろん、研修の後、教えたスキルを現場で使う人や、子どもとの関わり・声掛けの仕方が変化する人もいますので、研修そのものが無駄だとは思ってはいません。

 

さて、この本の内容ですが、報酬と罰だけではうまくいかないときに、報酬と罰の見直しをするほか、行動の引き金になる刺激や状況を操作することや、子どものソーシャルスキルを伸ばすこと、生理的・身体的な要因について考えることといった多角的な視点から子どもの困った行動への対処法を学べます。

 

この本を手に取る人は養育者・子どもの支援者に関わらず、知的には勿論、学ぼうとする動機づけもかなり高い人だと思います。

 

ABAやこの本のスキルを多くの人が身につけ、障害のあるなしに関わらず大人と子どものポジティブな関係性が増えることを願っています。

 

 

 

 

(501冊目)松本太一『アナログゲーム療育』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「指導者が上に立つのはNG」

 

以前松本太一先生の放デイ支援者向け研修に参加させて頂いた際、アナログゲーム療育についても知ることになりました。

 

私自身ゲームが好きだし、子どもたちも楽しく社会性(ソーシャルスキル)を学べるアイテムとしてアナログゲームを活用することは非常に良いと思いました。

 

ただし、私の事業所の利用者は重度以上の知的障害の子が殆どで、なかなか導入には至りませんでした。なので小学生以上の支援学級の子らでグループを作れる他の事業所での導入を進めています。

 

この本では単にゲームをやらせるのではなく、子ども達の発達段階に合わせた課題を持つゲームを提供するための考え方(ピアジェの認知発達段階を基盤としています)や、グループの構成や指導者の態度、子どもの問題行動への対処法等も学べます。

 

私もいつかどこかの事業所でアナログゲーム療育の枠を(曜日と時間等)設定してやれたらいいなと、導入できる日を楽しみにしています。

 

 

 

(500冊目)一般社団法人全国児童発達支援協議会『障害のある子を支える放課後等デイサービス実践事例集』☆☆☆

一番気に入ったことば「「勝ち負け」にこだわるような場合「数的概念」が未熟な部分も関連する」

 

この本は、放課後等デイサービスの支援従事者として他の事業所での取り組みや職員構成、支援計画と活動内容について学ぶことができます。

 

支援のヒントになる内容が多数得られるので、放課後等デイサービスの従事者には一読してほしいと思います。

 

私の会社では金銭的、人員的に実施が不可能な活動が多々あるなーと思っていましたが、9月にM&Aで先の会社が買収され、経済的な制約が解消されたので、子どもたちにとって良い支援のアイディアをできる限り会社、事業所に提案していきたいと思っています。

 

障害のある子を支える放課後等デイサービス実践事例集
 

 

 

(499冊目)P.A.アルバート・A.C.トルートマン(著) 佐久間徹・谷晋二・大野裕史(訳)『はじめての応用行動分析』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「分化強化手続き」

 

分化強化手続きとは、標的行動を別な行動に置き換えるために用いられる方法です。

多くの場合、問題行動を修正するためにその行動と同じ機能(機能=同じ目的・意味と捉えてください)をもった適応的な行動を身につけてもらうために用いられます。

因みに、「強化」も応用行動分析の専門用語で、行動の頻度や強さを高めるために用いる方法のことです。

つまり分化強化手続きとは、簡単にいうと「別な行動を身につけてもらう技法」のことです。

 

応用行動分析は、心理学の中でも特に学習心理学を基盤としています。心理学を基盤とする方の他、教育分野の方々にも活用されています。発達障害の支援・セラピーの方法としては現在最も信頼されている方略です。

欧米では発達障害児支援の第一選択とされており、アメリカでは半数以上の州で保険適用されています。

 

応用行動分析は専門用語が多く、一般的にはとっつきにくいイメージがあるみたいです。確かに学習心理学を学んでいない方が初見で学ぼうとすると難しいかもしれません。しかしその考え方はシンプルでシステマティックなので、曖昧模糊としたものより科学的でエビデンスベースドが好きな方はしっくりくるでしょう。実際私が職場で応用行動分析を用いた具体的なやり方を他スタッフに教えると、納得される方が多いです。

 

私は会社の後輩とプライベートで勉強会を開催しているのですが、これまで臨床心理学の学びをしてきた方々でも応用行動分析をしっかり学んできた方は少なく、発達障害児支援のためには後輩の方々にも学んでほしいと思い、この本をテキストとして用いました。

 

内容的には基本的な事柄をしっかり学べます。ただし、海外の書籍特有の(理解を深めるための)物語的な記述に抵抗感を覚える人は日本人が書いた基礎本もたくさん出ているのでそちらをお勧めします。

あと、誤植、誤訳と思われる個所がいくつもあります。それ故にわかりにくい表現が散見されます。私自身は元々応用行動分析の知識があったため本来言いたかったことを推理できましたが、初学者にはその点厳しいものがあると思います…。