たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(719冊目)スティーブン・ハップ、ジェレミー・ジュエル『本当は間違っている 育児と子どもの発達にまつわる50の迷信』☆☆☆

一番気に入ったことば「体罰は攻撃性や反社会的行動の増加、親子関係の悪化、精神衛生上の問題など、子ども時代のいくつかの好ましくない結果と有意に関連していることが明らかになっています。」

 

通説や俗説、あるいは一般的な感覚による子育てと、科学的な根拠に基づく合理的な子育て、あなたはどちらを選択しますか?

 

子どもの養育に関して、よりよい子育てをや、子どもがよりよく成長するための方法を模索したり悩んだりする親は沢山います。

 

一方で、子どもの成長や発達、自分の子育ての手段について無頓着で、思い付きによる子育てを行う親もいます。

 

そのバランスは家庭によって異なると思いますが、全ての人に正しい知識が提供されるわけではないし、親から愛されない、救われない子どももいます。

 

それでも私たち専門家や親のサポートをする仕事に従事している方々は、できる限り多くの方に正しい知識やより良い養育の方法を伝えたいと思って行動しています。

 

また、研究の結果から、親自身に精神疾患や発達障害等の課題がある場合、子どもの成長にネガティブな影響を与えることもわかっています。

 

こちらに関しても、リスク要因となるだけで、精神疾患や発達障害があると必ず悪影響を及ぼすわけではありません。

 

ただ、リスク要因を抱えた親の場合、子どもの成長の為に親本人のサポートも必要不可欠だと考えています。

 

児発・放デイの現場からは離れてしまいましたが、子どもたちのより良い成長の為に貢献したい気持ちは無くなっていません。

 

今は模索中ですが、以前以上に何かしら親や子どものサポートができるような仕事がしたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

4月5月映画備忘録

●ジョーブラックによろしく

不思議な雰囲気の映画でした。静かに進んでいく。

 

●正欲

視聴前に思っていた程衝撃的なものはなかった。心理士やってると普通じゃない人のほうが当たり前、みたいに捉えるようになるからかな。

 

●シドニアの騎士 あいつむぐほし

恋愛もロボットも、戦闘も世界観も描写が中途半端な印象でした。

 

●鉄道員(ぽっぽや)

ファンタジー映画。高倉健の朴訥とした雰囲気と、北海道の寂れた町と鉄道の哀愁が素敵な情景を醸し出します。

 

●ゴッドファーザーPART2

前作を基に、ヴィトー・コルレオーネの過去とマイケル・コルレオーネのマフィアとしての生き様が見られます。

 

●おーい、応為

葛飾北斎の偏屈老人っぷりがよかった。

 

●フォレストガンプ 一期一会

とても濃い映画だった。コメディ調の雰囲気を出すところとシリアスな心理描写のバランスがとても良い。

 

●ゴッドファーザーPART3

コルレオーネファミリーの最期。

 

●ゴーストライダー

ニコラス・ケイジがでているけどB級映画っぽい作品。

 

●蛍火の杜へ

雰囲気は夏目友人帳。だって原作者同じだし、アニメスタッフも同じだし。

 

●ブレードランナー2049

ブレードランナーの続編というよりオマージュ作品という感じ。

 

●トゥームレイダー

子どもの頃に視たような記憶が少しだけ思い出された。インディジョーンズのマイルド版。

 

●トゥームレイダーファーストミッション

ララ・クロフト役のアリシア・ヴィキャンデルの身体とアクションがかっこよかった。

 

●ぼくと魔法の言葉たち

物語化と思ったらドキュメンタリーだった。自閉症の子の成長と、親・家族の成長の物語と言えるかもしれない。

 

●何者

主人公拓人(佐藤健)が最終的に一番気持ち悪い人、という描写で終わるけど、登場人物全員気持ち悪い感じがした。類は友を呼ぶってことか。

 

(718冊目)藤原保信『自由主義の再検討』☆☆

一番気に入ったことば「自由主義は勝利したか」

 

自由主義の再検討という題名ではあるけれど、著者は自由主義には批判的な立場で、21世紀はコミュニタリアニズムの時代になるべきだと主張します。…と私は捉えました。

 

それは新しいというより懐古的じゃない?と思ったら、1993年の本だから、時代的に自由主義(資本主義や議会制民主主義)に対して批判的、対立的な立場をとり、より良いものを創造しようとしたのかも。アンチテーゼってやつですね。

 

全編を通して、著名な哲学者や思想家の引用の解釈とつぎはぎによって論ずる流れは、まるで論文を読んでいる、というか読まされているかのようで面白味に欠ける印象でした。著者の主張や考察はほんの僅かで、著者自身が勉強(研究と言うべきか)したことが並べられている、という印象の本です。

 

ちょっと古いですが、自由主義の歴史が知りたい方はどうぞ。

 

 

(717冊目)H.R.シャファー『子どもの養育に心理学がいえること』☆☆☆

一番気に入ったことば「常識を行動の指針にするには、慎重を要する。あいまいで誤りに陥りがちであり、個人的な意見や独断の仮面にすぎないことも多い。」

 

養育に関する俗説について、主に心理学の研究論文を解説する本です。

 

「女性のほうが男性よりも良い親になるか」、「母親は働きに出るべきか」、「親の精神病理は子どもに伝わるか」、「家族の貧困は心理発達に影響するか」、「体罰は心理的に有害か」といった気になる20のトピックについて、約30年前の情報(元の著書が1998年出版なので)を知ることができます。因みにこの日本語翻訳は2001年出版で、25年前です。

 

私自身学生の時に買った10年以上積読にしてた本なので、現在は研究も、情報も更新されているかもしれません。私の知る限り本の情報と現在の情報の逸脱はそれほど無いとは思いますが、一応古い情報だと思って読み進めました。

 

ひとつひとつの題目については、研究論文を基にある程度の回答を得ているものの、作者はとても慎重で、最終的には、取り上げた研究論文では未だ未解明な要因や、或いは交絡変数、関連しているけれど推定されていない要因がある為、現状では「はっきりわかっていない」というスタンスを取ります。

 

読み終わって、結局それかよ!と思いましたが、科学者としてはとても信頼できるスタンスです。

 

今現状で分かっている研究結果を基に、著者の「現在の」意見を述べる著書が好きな私からは、肩透かしというか、なんとももやもやとした読後感を得たように思いました。

 

しかしながら、p.3に「権威者の意見が、個人的な意見、当て推理、民間伝承、臨床経験、自らの育児経験といったもののないまぜにすぎないことが明らかになることもしばしばなのだ。」とあるように、大学の研究者や売れっ子の執筆家が自らの不確実な意見を主張する為に一部の研究論文を引用しているに過ぎない、と考えることもできます。

 

結局研究論文の情報も、権威者の話も、「確からしい」とか、「今現状でわかったこと」と捉える必要があり、将来覆される可能性があることを想定しながら聞く必要があるようです。

 

研究論文の知見はなんとも不安定で、そもそも情報の信頼性とは?みたいにも思いますが、確かに科学的な視点としては納得できます。批判的な精神こそが科学の神髄なのでね。

 

それとは別に、この本は読んでいて文章が理解しにくく、翻訳が直訳調であるところが多々あり気になりました。

 

ん?と思って「おそらく英語ではこう書いていて、こういうニュアンスだろうな…」みたいに、読んでいて引っかかることが多かったです。

 

私は翻訳のプロではないですが、読者の意見として、前後の文脈や心理学的知見を基にした、もっとわかりやすい文章で翻訳作業をしてほしかったなぁと思いました。

 

 

 

(716冊目)原田マハ『ジヴェルニーの食卓』☆☆☆

一番気に入ったことば「モネの「アトリエ」、それは青空の下のことだ。

 

時間に追われることなく、余暇に小説を読む。

 

仕事をしていると、どうしてもそればかりが気になって仕事に関連する本ばかり読んでしまっていたけれど、そのような束縛が無くなった今は、小説を読む気持ちの余裕がある。とても贅沢なことだと思います。

 

ただ、一方で大学の頃のように集中して小説を味わえていない感覚も覚えました。

 

何かに追われているのが「くせ」になってしまったのか、読んでいて注意が途切れたり、記憶や想像力が曖昧になる感覚が頻繁に起こっているように思いました。

 

勿論、昔もそのような感覚を得ることがあったのだが、顕著になっている気がするのです。

 

昨年の9月に病気を患い、約半年の治療期間が過ぎ、回復して日常を取り戻したと思いましたが、もしかしたらまだ精神的な回復の途中にあるのかもしれません。

 

昨日SOMPO美術館の企画展「ウジェーヌ・ブーダン展」に行ってきました。

 

美術や文学に触れられる。贅沢で豊かな時間の使い方ですね。

 

 

(715冊目)シンシア・ウィッタム『きっぱりNO!でやさしい子育て 続読んで学べるADHDのペアレントトレーニング』☆☆☆

一番気に入ったことば「よい面をとらえる」

 

基本的な方針はUCLA神経精神医学研究所のペアレントトレーニング・プログラムを基にしているので、前作で学んだ内容とほぼ同じと捉えることができます。

 

この本の特徴は、子育てで起こる問題(問題行動含む)に特化して、「好き嫌い」や「あと1回だけ!と言われたら…」等、あるあるの場面に対して、どのように対応するのかを具体的に記述している点です。

 

一部アメリカらしい場面や表現もありますが、概ね日本での子育て中のあるある場面に当てはめても違和感はないと思います。

 

25日に障害児支援従事者と親向けの講演会を行う予定なので、復習というか、知識の再確認として読みました。

 

 

 

(714冊目)M・キーナン、K・P・カー、K・ディレンバーガー(編)『自閉症児の親を療育者にする教育 応用行動分析学による英国の実践と成果』☆☆☆

一番気に入ったことば「行動分析家たちは、親にスキルを身につけてもらうことは道徳的に正しいと主張しています。」

 

親を療育者に…という題名から、ペアトレ、あるいは親支援の本だと思って読んだのですが、少し違ったようです。

 

アイルランドでの親によるABAの実践報告が主で、行動分析家やその他の専門家の関わりは客観的に記述されています。

 

PEATという組織に親が参加してABAを学び、家庭で実践することや、その中身、ABAの理論については理解できたのですが、PEATがどのように親に指導しているのか、指導方法や頻度、料金、等具体的な親教育の方法についてはよくわかりませんでした。

 

そりゃぁ、ABAの知識を子どもが未就学から就学までの間に1から教えて、分析方法やデータのとり方まで教えられたら、そりゃ成果が出るだろうと思うのですが、そこまでの時間や料金を考えると、現実的ではないなと思いました。

 

そんなふうに長い期間専門家からABAを学べるのは、よっぽどの資産家で、しかも療育の時間を子どもに提供する為には専業主婦に限られます。

 

そのような対象者向けの親教育プログラムがあってもいいとは思うのですが、個人的にはもっとABAの知識を世間一般の方に広く知ってもらえたらいいなと思っています。