一番気に入ったことば「常識を行動の指針にするには、慎重を要する。あいまいで誤りに陥りがちであり、個人的な意見や独断の仮面にすぎないことも多い。」
養育に関する俗説について、主に心理学の研究論文を解説する本です。
「女性のほうが男性よりも良い親になるか」、「母親は働きに出るべきか」、「親の精神病理は子どもに伝わるか」、「家族の貧困は心理発達に影響するか」、「体罰は心理的に有害か」といった気になる20のトピックについて、約30年前の情報(元の著書が1998年出版なので)を知ることができます。因みにこの日本語翻訳は2001年出版で、25年前です。
私自身学生の時に買った10年以上積読にしてた本なので、現在は研究も、情報も更新されているかもしれません。私の知る限り本の情報と現在の情報の逸脱はそれほど無いとは思いますが、一応古い情報だと思って読み進めました。
ひとつひとつの題目については、研究論文を基にある程度の回答を得ているものの、作者はとても慎重で、最終的には、取り上げた研究論文では未だ未解明な要因や、或いは交絡変数、関連しているけれど推定されていない要因がある為、現状では「はっきりわかっていない」というスタンスを取ります。
読み終わって、結局それかよ!と思いましたが、科学者としてはとても信頼できるスタンスです。
今現状で分かっている研究結果を基に、著者の「現在の」意見を述べる著書が好きな私からは、肩透かしというか、なんとももやもやとした読後感を得たように思いました。
しかしながら、p.3に「権威者の意見が、個人的な意見、当て推理、民間伝承、臨床経験、自らの育児経験といったもののないまぜにすぎないことが明らかになることもしばしばなのだ。」とあるように、大学の研究者や売れっ子の執筆家が自らの不確実な意見を主張する為に一部の研究論文を引用しているに過ぎない、と考えることもできます。
結局研究論文の情報も、権威者の話も、「確からしい」とか、「今現状でわかったこと」と捉える必要があり、将来覆される可能性があることを想定しながら聞く必要があるようです。
研究論文の知見はなんとも不安定で、そもそも情報の信頼性とは?みたいにも思いますが、確かに科学的な視点としては納得できます。批判的な精神こそが科学の神髄なのでね。
それとは別に、この本は読んでいて文章が理解しにくく、翻訳が直訳調であるところが多々あり気になりました。
ん?と思って「おそらく英語ではこう書いていて、こういうニュアンスだろうな…」みたいに、読んでいて引っかかることが多かったです。
私は翻訳のプロではないですが、読者の意見として、前後の文脈や心理学的知見を基にした、もっとわかりやすい文章で翻訳作業をしてほしかったなぁと思いました。





