たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(521冊目)ヤン・フルセッヘ、アド・フェアフール (著), 姉崎弘 (監, 訳)『重度知的障がい者のここちよい時間と空間を創るスヌーズレンの世界』☆☆☆☆

一番気に入ったことばスヌーズレン」

 

放デイ事業所にてスヌーズレンを導入するために購入しました。
スヌーズレン施設を作るわけではなく、ミニスヌーズレンを提供するためのスヌーズレン部屋を構成するための基本的な考え(スヌーズレンの哲学)や実践に必要な道具の選定に役立ちました。

私はこれまで行動分析を基盤としながら、SSTや遊びを元にした発達促進のための療育を行ってきましたが
小学校高学年以上の重度知的障害の子どもたちに対してそれらの活動がなかなか結果に繋がらないことに悩んでいました。

この本を読んで、彼らを私達の世界に合わせてもらうための努力をしているのだと気づかされました。
大切なのは彼らの世界を私達が理解しようと努力し、その世界の中で得られる楽しみや喜びに着目することだと思いました。

勿論、個々人に合わせた身辺自立課題やソーシャルスキル、知的発達を放棄するわけではありません。
定型発達の子らは能動的に学び、遊び、そしてリラックスする時間を獲得することができます。
一方で発達障害、重度知的障害の子らはそれらを能動的に獲得することが困難だと考えます。
そのため、私達支援者がそれらを提供することで、彼らの世界をより豊かにしていくことに貢献できると考えています。

スヌーズレンについて聞き覚えただけでやや間違った理解をしている放デイ事業所、職員もいるので、この本を根拠にスヌーズレンの本当の考え方を伝えたいと思っています。