たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

537冊目、佐藤恵美『もし部下が発達障害だったら』☆☆☆

一番気に入ったことば「「異動」というその場しのぎの対処だけでなく、Mさんをどうマネジメントするのか、というところが課題であると言えます。」

 

 

私の職場にも、数名、診断のついてないけれど発達障害の特性がある方、あるいはグレーゾーンのと思われる方がいます。

 

ASDの特性は、S=spectrumであるため、正常か障害かを区別するものではありません。

 

ASD等の発達障害は、ある特性が、ある社会的状況下で本人や周囲の人に生活上・仕事上の困難さを恒常的にもたらす場合に問題となりその改善が求められます。

 

さて、対象の職場の方ですが、本人はあまり困ってない?頑張っているようですが、努力ではどうしても職務改善が難しい状態に陥っています。周囲からの仕事上の評価が低く、厳しい指導をされています。指導する方も努力し工夫してますが、どう教えたら身につくのか困っているようです。

 

私は心理士ですが、職場の職員に対しては、セラピストとクライエントの関係ではないので、セラピー(カウンセリング)を行うことはできません。簡単なアドバイスや一般的な相談受付が限界です。

 

この本にあるように、上司や会社がまず発達障害の基礎知識を得ることは前提ですが、そこからマネジメントの改善・工夫をしても周囲のスタッフも困難さを抱える場合、本人に医療機関の受診を勧めるのがベターかなと考えます。

 

それは、病気や障害というレッテルを貼ることが目的ではなく、本人や周囲の人がより良い生活・仕事をする為に必要なことだと、私は思うのです。