(509冊目)宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』☆☆☆☆

一番気に入ったことば遂行機能障害症候群」

 

最近は発達障害と非行・犯罪に関する本をいくつか読んでいます。

 

というのは、まさに将来の非行・犯罪が懸念されるような児童の支援に携わっているからです。

 

一応誤解の無いように言いたいのですが、発達障害そのものが非行・犯罪の可能性を高めるわけではありません(という統計的なエビデンスがあります)。

 

軽度知的障害、ADHD、養育環境、アンガーコントロールスキル、対人関係の社会的スキル、自己肯定感の低さ、等様々な要因が絡み合って非行・犯罪へとつながっていきます。

 

なのでその子がどのようなリスクを持っているかを明確にした上で、そのリスクを低減していく支援が大切だと思います。そしてそれはその子のもつリスク要因の大きさによって介入方法が異なってきます。

 

この本では概ね、軽度知的障害あるいは境界知能に由来する遂行機能の低さを要因とし、学習の基盤となるような認知機能強化トレーニングを用いて支援すること推奨しています。

 

認知機能強化トレーニングを著者は「コグトレ」と名付けています。コグトレでは、記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断に対応する、「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」課題を行います。

 

私が知っている限りでは、支援学級や支援学校では、この本でも言及されているように、発達障害や知的障害の子に対して社会性に関する学びの時間は少なく、学習支援も単に簡単な学習プリントを繰り返しやらせる等、個々の課題に対応できるような支援は殆どなされていないのが現状のようです。

 

一部の意欲的な教員の方はこの本にあるようなコグトレを導入したり、ソーシャルスキルレーニングを行ったりしているのですが、全体としては発達障害に関する知識や学習支援技術にまだまだ明るくないのが現状です。中には子どもの成長よりも自分がサポートすることに満足感を得ていると思われる先生もいます。

 

これは教員の質の問題ではなく、特別支援教育に関わる教員の全体数の少なさ、特別支援教育の範囲の広さ(神経発達症群と身体障害群では支援の方略が異なる)、特別支援教育の学習指導要領の未熟さといった、国のシステム的な問題だと推察しています。

 

コグトレについては私も良い支援方略の一つだと思いますが、一部で発達障害の子をもつ親の困り感を狙った高額な費用をとる所もあるので気を付けてください。

 

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)