たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(516冊目)羽生善治『人工知能の核心』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「ロボットが得る「報酬」」

 

比較心理学という心理学の分野があります。

ヒトとそれ以外の動物を比較することで、ヒトとそれ以外の動物の心理の異同を見出そうとする学問です。

 

人工知能の研究は、今後ヒトの知能や行動、感情のメカニズムを解明するための一助になることでしょう。

 

ところで、ロボットが自立的に作動するには報酬のプログラムが必要なようです。

ロボットにとっての「報酬」は「目的」と言い換えることもできます。

 

面白いと思ったのが、掃除機ロボットに「たくさんのゴミを吸い上げる」ことが目的だということを学習させるとして、「ゴミを吸い上げてはまき散らし、それを吸う」と誤学習する可能性があるというものです。

 

その目的を合理的に叶えようとすると、ロボットは人間がしてほしい目的とは異なる動作をしてしまうということだそうです。

 

この記述を読んで、行動分析による人の行動の考え方に通じるところがあるなぁと思いました。

例えば私の仕事の経験から、発達障害を抱える子への対応として他スタッフが、離席の多い子を座らせようとする際に、「座りなさい」と言って座らせたとします。その子にとっての報酬は「座りなさい」とスタッフに声をかけてもらうことなので、益々離席が増える、といった具合です。

 

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