一番気に入ったことば「ほめるということには、ことばだけでなくいろいろな要素があります。」
仕事でペアレントトレーニングを行おうと思っています。そのために読みました。
この本はABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)を基本としてADHD(傾向)の子を主に、子育て中に起こる子どもの困った行動に対応するための技法が述べられています。
ただし私の経験では、ADHDでも中等度より重い知的障害がある子にはこの本に載っている対応をしてもうまくいかないどころか、場合によってはより悪い結果になる可能性があるかもと思いました。
あくまでことばの理解が十分にできる知的レベルの子を持つ親御さんが対象で、子どもの言語・認知レベルは少なくとも4歳以上が必要です。
全体としてみればABAの知識を基にした適応的行動の獲得やスモールステップでの行動形成が取り上げられていますが、残念ながら著者はABAを部分的に学んでいるか、あるいはその技法を間接的に学んだうえで独自のやり方を提案しているように思いました。
ということで、ABAの専門家からするとこの本の基盤であるUCLAの精神神経医学研究所で開発された親訓練プログラム自体が未完成なものであり、それを輸入してペアレントトレーニングをしている国立精神・神経センターにも疑問を抱いてしまいます。
この本の初版は2002年であり、約20年前という歳月が経ちABAはもちろん養育の知識(とともに私の知識)がアップデートされたが故にずれを感じるのかもしれません。
この本を読んで実践した親御さんが、うまくいったのならよいのですが…そうでないならABAを専門とする臨床心理士等に助言を求めるとよいと思います。因みに我が国においては臨床心理士や公認心理師でもABAの知識は個人差があります。
今度この著書の翻訳者に会う機会があるので質問、議論したいと思っています。
読んで学べるADHDのペアレントトレーニング――むずかしい子にやさしい子育
- 作者: シンシアウィッタム,上林靖子,中田洋二郎,藤井和子,井澗知美,北道子
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2002/03/22
- メディア: 単行本
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