たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(518冊目)奥田健次・小林重雄『自閉症児のための明るい療育相談』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「中学生になってケアするということは専門家にとってもとても大変なことです」

 

上記は小林先生のことばです。勿論中学生以上の児童でも問題行動の変容は可能ですが、行動分析では「目の前の問題行動は過去の学習によるもの」と考えるため、問題行動が長期にわたって維持されている場合その変容はかなり困難になってきます。

 

 

さてこの本についてですが、ABA(応用行動分析)のテキストとしては基礎を越えて応用レベルになると思います。一般の方がいきなり読んでも価値観にそぐわずできなかったり、なんとなくやっても失敗する可能性があるかなと思いました。実践するにはABAの基本を理解しておくとよいでしょう。

タイムアウトは専門家の監督の元行うよう」に、といった注意書きや、「子どもに合わせて手だてを見つけること」等のアセスメントの重要性が回答の一部に記述されているのですが、私個人の考えとしては、まえがき等で明記しておくとよかったかなと思いました。

 

通常の療育相談であれば、ABAの専門家である私も、奥田先生・小林先生も、ここにあるような数行の文章による相談ならば、さらに必要なアセスメント(情報収集)をして個々人の状況に合わせて介入方法を選定すると思います。また、親や教師にコンサルテーションするにしても、親や教師の能力・意欲に加え、現場の現実的な制約も加味した上で介入方法を伝えます。

 

それにしても生活場面や遊びの場面、ことばのやりとりに関するよくある悩み相談に対してABAの技法や奥田先生と小林先生独自の(と思われる)技法を多数学べて個人的に満足すると同時に、関わっている事業所の問題行動に当てはめ試してみたいというモチベーションが喚起されました。

 

 

ABAの基本がわかっていても、問題行動に対する介入を成功させるためにはアセスメントと介入アイディアが必要不可欠です。あの子のあれにこの技法が使えるな、という感じで、いくつか保護者の方にこちらから介入の相談をさせてもらいました。