たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(498冊目)木村順『発達障害の子の指遊び手遊び腕遊び』☆☆☆

一番気に入ったことば「強くつかむ、そっとつまむはどちらも重要」

 

他事業所で手先の不器用さや弱さがある子に対して、療育として指先の運動ばかり沢山提供している方がいます。この本でも言及していますが、手先の細かな操作性の為には、手、腕を使って力を入れたりそれらを上手にコントロールする運動遊びも必要になってきます。

ある学校では、書字が乱れている子や枠からはみ出て字を書く子にひたすら同じプリントを繰り返し練習させていたりもします。字を上手に描くためには、指先の運動遊びの他、上記の運動遊びや、利き手とは反対の手の動きがどうなっているか、視覚的な問題はないかといったことをアセスメントし、左右の手を使う課題(遊び)や、目と手の協応課題(遊び)、視空間認知能力を育む課題(遊び)を提供するのがよいでしょう。

 

他、日常的な問題として、「箸を上手に使えない」「ボタン・ファスナーのとめ外しの苦手さ」「(男の子)トイレ時に服が濡れてしまう」「よく物をこぼしたり落としたりする」「指しゃぶりや爪かみがなおらない」「折り紙や積み木が下手で遊びたがらない」「お遊戯や手遊び歌の動作がなかなか身につかない」といったものもあります。学習面でも手指を使った課題があるとそこに苦手さを感じ、嫌いになってしまうこともあります。

 

私の事業所には、発達性協調運動症と思われる子や遺伝子疾患により元々身体機能が弱い子、脳性麻痺のために必ずしも機能訓練を行ったら改善するというわけではない子どももいますが、遊びとして身体を動かすことは、それ自体を楽しむ活動として提供することができるので、2次的な障害を予防するためには良いと思っています。