たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(496冊目)木村順(監)『発達障害の子の感覚遊び運動遊び』☆☆☆

一番気に入ったことば「原始系」

 

触覚には本能的な働きである「原始系」と、認知的な能力である「識別系」とに分かれるそうです。

 

「原始系」は触れたものが危険かそうでないかを即座に感じ取る機能を持ちます。感覚過敏は触覚防衛反応が強く出てしまうことによって起こります。

 

「識別系」は、例えば手探りで触ったものの大きさ・形・素材を区別するなど、感覚からイメージを生起させる機能です。

 

定型発達児では、発達とともに「識別系」の機能が向上することで「原始系」の機能が抑えられていくのですが、発達障害児(や所謂グレーゾーンの子)の中には感覚のトラブルによって感覚過敏や感覚鈍麻の状態になることがよくあります。年齢が上がっても親に歯磨きや爪切りをされることを極度に嫌がる場合は感覚過敏の症状かもしれません。

 

他にも、手先の不器用さや運動の苦手さ、姿勢の悪さや落ち着きのなさ、集中力の無さや我慢の苦手さ、行儀が悪かったり音へのこだわりがあったりというのは、単に経験の少なさや本人のやる気の無さといったものではなく、感覚のトラブルが起こっている可能性があるそうです。感覚統合療法を元にした遊びによってこれらの問題が解決する可能性があります。