たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

524冊目、中野信子『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「「愛」や「正義」が、麻薬のように働いて、人々の心を蕩かし、人々の理性を適度に麻痺させ、幸せな気持ちのまま誰かを攻撃できるようにしてしまう」

 

 

最近職場でパワハラ、またはモラハラと思われる言葉による精神攻撃を多々受けています。そこで他者の攻撃性について調べてみようと思いこの本を手に取ってみました。

 

脳科学や心理学、文化人類学からの知見から、無意識に他者を攻撃する人の心理が理解できました。

 

中野先生はシャーデンフロイデの理由は主にオキシトシンによるものだと説明しています。私自身は自閉症研究においてオキシトシンは愛情や社会性(他者との関わり)について重要だと知っていたくらいなので、過剰さが攻撃性に代わることは非常に興味深く感じると共に恐ろしさも覚えました。

 

また、倫理感について、心理学実験では有名なミルグラムの電気ショックの実験や、ジンバルドーの「スタンフォード監獄実験」に加え、サード・ウェーブ実験やマクドナルドのメニューに関する実験を引用し、個々人の倫理観や正しさに疑問を呈するところも参考にさせていただきました。

 

それらの知識や指摘は、直接攻撃性を示す方には伝わりにくいかもしれませんが、私も含め周りで困っている方は「なぜいじめやパワハラをする人がそういう言動をするのか」について理解することに繋がると思います。

 

今後は法的な括りだけではなく、本書を含め心理的な説明も行い、社にパワハラモラハラ問題を改善するための提唱をしていきたいと思っています。