たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

読了[477冊目]松坂清俊『発達障害のある子の発達支援』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「保育・教育臨床と心理臨床の統合」

この本は、言語、情緒、社会性、遊び、などの発達の知識に関して、発達障害のある子を中心とした視点で得られます。


また、そのような視点を元にどのような支援が必要かについて、いくつかの療育プログラムを参考に施策を得られます。


非常によくまとまっていて、発達障害の支援に関わる人には是非一読してもらいたい著書です。


なぜなら、副題に「保育・教育臨床と心理臨床の統合」とありますが心理臨床の専門家に関わらず(私は心理臨床が専門です)
発達障害の子の支援を行う専門家が必要な各分野の知識が詰まっているからです。


特に保育や児童発達支援に関わる上で、発達障害児支援の基礎を学びたい方にはうってつけだと思います。


読了[476冊目]中川信子『1・2・3歳ことばの遅い子 ことばを育てる暮らしのヒント』☆☆☆

一番気に入ったことば「ほんとうにことばを覚えてゆくためには、「今、ここにいる、〇ちゃん」にむかって話されることばが一番大事。」


この本はことばの理解・表出が遅いなと感じる保護者向けの本です。


基本的な内容と、Q&A方式によるよくある悩みについての回答が記述されています。


ことばの遅れについて対応したい支援者や、ことばの遅れが気になる保護者が初めて手に取る本として最適です。


文章から著者の優しさが感じられる良書です。


1・2・3歳ことばの遅い子―ことばを育てる暮らしの中のヒント

1・2・3歳ことばの遅い子―ことばを育てる暮らしの中のヒント

読了[475冊目]大隅典子『脳からみた自閉症』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「ドーハッド仮説」


本書が2016年刊行なので、その時点で分かっている自閉症に関する脳科学の研究成果について紹介されています。


基本事項やこれまでの定説にも触れられていて、非常にわかりやすく書かれています。


但し、あくまで脳科学の本なので、ASDを抱える子の支援者や親が読んでもすぐには役に立たないと思います。


私は自閉症自閉スペクトラム症:以下ASD)の発生機序について知りたいと思ったので内容的には満足です。
シモンズ財団で公表されている最も研究が進んでいる30の関連遺伝子や、オキシトシンによる自閉傾向の改善傾向がみられる研究が熱い。


父親の加齢によってASDの発症リスクが上がるのは他の文献、メディアでも有名な話です(オキシトシンもね)。


胎児期の環境や、PAX6遺伝子との関連はこれからの研究に期待という、非常にワクワクする感じを抱きました。


私自身は研究者ではないです。寧ろ現場でASDを抱える子の支援を行うのが本業なのですが、
基礎研究の知見は保護者への説明に役立つし、私たち専門家が支援を行う上での行動の根拠になり得ます。


本日読了[474冊目]熊野宏昭『実践!マインドフルネス』☆☆☆

一番気に入ったことば「マインドフルネス瞑想の実践法」

この本は、会社で上から業務として「ヨガと瞑想」が強制(ラジオ体操みたいな感じ?)される中で、
瞑想が、よりスタッフのストレス低減になればと思いマインドフルネスの知見を広めるために読みました。


一般向けで、以前熊野先生が行ったセミナーの内容をまとめたものです。


熊野先生のテレビでの話は視聴していたので、それほど目新しい知見を得られたとは思いませんが


マインドフルネスの基本をスタッフに提供するためには役立ちそうです。


実践! マインドフルネス―今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン[注意訓練CD付]

実践! マインドフルネス―今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン[注意訓練CD付]

読了[473冊目]亀口憲治『家族療法的カウンセリング』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「円環的質問法」


専門家向けです。中でも亀口先生の家族療法を学びたい人向けです。


学会で拝見した亀口先生の個人的な印象ですが、非常に博識で経験豊富な臨床家であり、同業の者からカリスマ性を感じるに値する言葉と態度が見られました。


この本はそんな印象を受ける以前に、私自身が家族療法の知識や技法を学ぶために購入し、最近改めて通読したものです。


臨床心理士はクライエント「個人」に注目しがち(特に医療分野では)ですが、個人を取り巻く家族等の他者に視線を向けることは大切です。
ただし、クライエント以外の家族(や取り巻く人)に介入が難しいという問題もありますが。


家族療法を行うかは別として、仕事をしていて思うのは、福祉分野では家族システム論を理解した上で個人を見る視点が大切だと思います。


家族粘土法や上記の質問法、家族イメージ法等、すぐに取り入れたい技法についても学べます。


子どもの支援のために役立てていきたいと思います。



家族療法的カウンセリング (21世紀カウンセリング叢書)

家族療法的カウンセリング (21世紀カウンセリング叢書)

読了[472冊目]中川信子『ことばの遅れのすべてがわかる本』☆☆☆

一番気に入ったことば「インリアル・アプローチ」


この本は保護者の方向けに、子どもの言葉の遅れが気になる場合の対応方法や養育の方法について書かれたものです。


専門家の私は子どもへの関わり方を学ぶというよりも、親御さんへのアドバイスをする場合のヒントを得るために読みました。


イラストがたくさん用いられ、一般の方に読みやすい構成になっています。


ことばの遅れのすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

ことばの遅れのすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

読了[471冊目]橘玲『言ってはいけない 残酷すぎる真実』☆☆☆☆

一番気に入ったことばオキシトシンが(中略)仕事に行くとその供給が途切れてしまう」


この本は、表面上は人々の関心・興味に対して甘言を与えるようなキャッチーな題名、帯の言葉が目立ちますが

実際中身を読むと、研究成果に基づいて常識や通説、俗説にメスを入れようとする良書だと思いました。


もちろん、人々の歓心をかうために上手に構成(研究の取捨選択)されている感もあるし、研究結果から考察されることはまだまだ検証の余地があるのでは?と思うところもありましたが、
それでも(一般レベルでは)この本で主張されていることが現在の科学的な研究の結果事実と認めざるを得ないと思いました。


科学は信じることではなく、批判の元に成り立つものです。


言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)