たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

読了[471冊目]橘玲『言ってはいけない 残酷すぎる真実』☆☆☆☆

一番気に入ったことばオキシトシンが(中略)仕事に行くとその供給が途切れてしまう」


この本は、表面上は人々の関心・興味に対して甘言を与えるようなキャッチーな題名、帯の言葉が目立ちますが

実際中身を読むと、研究成果に基づいて常識や通説、俗説にメスを入れようとする良書だと思いました。


もちろん、人々の歓心をかうために上手に構成(研究の取捨選択)されている感もあるし、研究結果から考察されることはまだまだ検証の余地があるのでは?と思うところもありましたが、
それでも(一般レベルでは)この本で主張されていることが現在の科学的な研究の結果事実と認めざるを得ないと思いました。


科学は信じることではなく、批判の元に成り立つものです。


言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

読了[470冊目]ヘルマン・ヘッセ、高橋健二訳『デミアン』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「人はカメのように自己自身の中に完全にもぐり込まなければならない」



この本は大学時代の親友に勧められて読みました。


主人公シンクレールの内省や、家族や他者との関わりの中で感じる狭窄さは、(大人になった読者からみて)若さ故のそれと言うべきか、
それとも過去の自分の浅薄な思考の追視体験になるのか。


同年代の読者であれば、その思考がリアルに感じられるか。


あるいは文化的な違いやパーソナリティの違いに拒否反応を覚えるか。


物語のほとんどの部分がシンクレールの内言(あるいは感覚)を繊細な言葉で表現していることに、この作品の価値があると思います。


つまり、作中に語られる言葉、その感情に共感できるか、それとも違和感を覚えるかによってこの作品の評価は分かれると思います。


醜いと自分自身が思う内面を、美しいと思われる言葉で表現した作品です。



デミアン (新潮文庫)

デミアン (新潮文庫)

読了[469冊目]安藤延男『コミュニティ心理学への招待』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「戦略概念としての「コミュニティ」」


学部生の時、しかもまだ行動基礎論コース(心理学)に入ってなかった学部1年生のときに大学生協で購入したものです。
教養科目や心理学の基本を学ぶ現状に


そのときは、基礎心理学応用心理学の違いくらいは知っていたけれど、この本を見つけて
「へー、心理学にも色々あるんだな」と興味を持って手に取った記憶があります。


当時は、初めて知る知識に感銘を受けた感があったのですが、部分的に読んで終わっていました。
今改めて読んでみて、このような視点は、臨床心理士スクールカウンセラー他、福祉関係や教育関係に従事する専門家にとって
踏まえておくべき知識としてなかなか良い本だと思いました。


また、個人面接を行う臨床心理士にとっても、マイクロシステムからメゾシステム、あるいはエクソシステムあたりまでの視点を踏まえて
個人を見ていくという、広い視点を身につけるために、コミュニティ心理学の理論が役に立つと思います。

コミュニティ心理学への招待―基礎・展開・実践

コミュニティ心理学への招待―基礎・展開・実践

昨日読了[468冊目]リヒテンバーガー,E.O.,マザー,N.,カウフマン,N.L.,カウフマン,A.S.,著、上野一彦・染木史緒(監訳)『エッセンシャルズ心理アセスメントレポートの書き方』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「忘れないこと!」


この本は、事業所でアセスメントを行うこと、フィードバックを行うことの事前学習として読みました。


学生時代に修得した知識の再確認をし、改めてアセスメントの重要性とそのフィードバックの心得について学びました。


気に入ったことばの「忘れないこと!」は所々にある要点のまとめ表の言葉です。


Don't forget!の直訳かな?


「重要なこと!」とか「要点!」とか、「覚えておこう!」の方がしっくりくる気がして、逆に見る度に違和感を持って覚えられましたw


全体としては、観察によるアセスメントや見立て・指針、フィードバックの心得などアセスメント全般の知識が得られるものの、
例にしているアセスメントは知能検査によるものが主なので、それ以外のアセスメントにここの知識を流用するためには、読み替えが必要かもしれません。


エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方

エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方

  • 作者: エリザベス・O.リヒテンバーガー,ネイディーン・L.カウフマン,アラン・S.カウフマン,ナンシーマザー,Elizabeth O. Lichtenberger,Alan S. Kaufman,Nadeen L. Kaufman,Nancy Mather,上野一彦,染木史緒
  • 出版社/メーカー: 日本文化科学社
  • 発売日: 2008/10/01
  • メディア: 単行本
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読了[467冊目]能登谷晶子・編『ことばの障害と相談室』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「ことばの発達」

この本は、ことばの障害の専門家、あるいはそれを必要とする保護者向けに書かれた本です。


たったの80ページ程の本ですが、なるほどと思える学問的な知識が詰まっています。


発語や構音、吃音等ことばの問題に取り組もうという初学者にとっては一読の価値ありです。


ことばの障害と相談室

ことばの障害と相談室

昨日読了[466冊目]神田冨士子『どうする?1,2歳の噛みつき・ひっかき』☆☆☆

一番気に入ったことば「噛みつきやひっかきの問題が起こるのは、たいてい、戸外遊びが不足しているときです。」


利用者の子どもの噛みつき、ひっかき(抓り)対応のため読んでみました。


この本は基本定型発達の子を想定して書かれているため、私が苦慮している子への対応とは異なるかもしれません。


ある程度この本の通りにやってみたのですが、その対象児が満たされるとはどの程度なのか判断しにくい、また満足の程度まで1人の子に対応することが事業所として不可能なのが現実です。


市の発達センターでも、保護者の、私の事業所でも色々な対応をしてるのですが、改善できていません。


さて、またヒントを求めて他の本を読んでみましょうか。



どうする? 1、2歳児の噛みつき・ひっかき

どうする? 1、2歳児の噛みつき・ひっかき

昨日読了[465冊目]市川宜伸編著『発達障害の「本当の理解」とは』‐医学、心理、教育、当事者、それぞれの視点☆☆☆

一番気に入ったことば発達障害はあってはならないものではなく、一つの特性と見ることができるもの」


この本は、ASDを中心に、医学、心理学、教育学、福祉、当事者など様々な分野の方々が自らの、あるいは学術的な視点で執筆されたものです。


薄い本の割に9章もあり、一つ一つの章は短く、掻い摘んで要点だけを流して見るにはいいと思います。