一番気に入ったことば「明らかに、あるものは心を持ち、別のものは持たないということを、道徳的に確実な程度まで知ることは可能なのである(そして、それが問題のすべてだ」
デネットは人間以外の生物、または自分以外の他者が心を持っているかどうかについて、心の存在証明よりも道徳的価値に重点を置いています。
なるほどその考えは実に生産的で、心を内的で閉ざされた存在から外界との相互作用のうえに成り立つという前提から、更に私たちが意識に興味を持つことについての価値を見出しているといえます。
著者の別著である『解明される意識』にも目を通して見たのですが、どうやら『心はどこにあるのか』は読み物として一般読者に向けられたもののようです。
そのため、論旨を疑えば綻びを見つけることもできます。いや、それにしてもその考察の過程は面白いです。
著者の意識についての主張は『解明される意識』の方にもっと詳しく載っています。
ちなみに他者に意識は存在するのかについては不良設定問題であるため、現在のところ推測の域を出ることはありません。
そのために当然デネットと別なパラダイムを組み立てることも可能になります。
全体としては難問を取り扱っていて解りにくいかもしれませんが、章ごとの考察を追うと実に魅力的な思考の糧を提供してくれているように感じました。
デネットはこの本の序文で、哲学者は疑問に解答することは不得手であるが、疑問を提出することは得意だと叙述しています。
まさに哲学者はそうあるべきで、僕自身も他者の思考運動を喚起するような刺激を与えたいと常々思っていたりします。
- 作者: ダニエル・C.デネット,Daniel C. Dennett,土屋俊
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
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