たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(672冊目)西内ミナミ(作)、堀内誠一(絵)『ぐるんぱのようちえん』☆☆☆

一番気に入ったことば「「さみしいな さみしいな」と いって、みみを くさに こすりつけたりしました。」

 

主人公の「ぐるんぱ」は、冒頭、ずっと一人で暮らしてきて、汚くて臭くて、寂しさに涙を流します。

 

ジャングルの仲間がぐるんぱを洗って綺麗ににして、働きに出すことにしました。

 

その後は、行く先々の職場で、作るものが全て大きすぎて、すぐに追い出されます。

 

終盤12人の子どもを持つ母親に出会い、子どもと遊ぶようお願いされます。

 

職場で作った大きなピアノを弾いたり、大きなビスケットをちぎって子どもたちにあげます。それが好評だったようで、ぐるんぱは幼稚園を開き、自分の仕事を得て、寂しくなくなりました。

 

これがストーリーで、素直に読むと、嫌われ者で仕事もうまくいかない主人公が、自分の適材適所をみつけてめでたしめでたし、という話だと思います。

 

しかし、私は読んでいて、違和感を覚えました。

 

まず1つ目、これまで一人で生きてきたのはよいとして、何故ジャングルの仲間たちはわざわざ綺麗にして追い出すのか。普通なら汚いまま仲間外れにしてしまうでしょう。

 

2つ目、行く先々の職場で、大きいとはいえ、あっという間にクッキーやピアノや車などの作り方を覚え、しかも子どもたちにすぐにピアノを弾いてあげる天才ぶり。

 

穿った見方をすれば、人に嫌われていても人生運よくうまくいくし、努力しなくてもやれば何でもできてしまう天才の物語です。

 

辛い境遇にある人や、苦労してきた人にとっては、実際に存在する、何も努力しなくても運よく天職にありつき、経済的にも寂しさを紛らわしてくれる周囲の人にも恵まれる人がいるという、見たくない真実を突き付けられているように感じるのではないでしょうか。

 

子どもにとっては夢のあるファンタジーでも、現実の大人にとっては残酷なファンタジー、この物語が表現している怖さを感じました。