たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

〈540冊目〉小笠原恵(編)『発達が気になる子のやる気を引きだす指導法』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「権利の剥奪による行動の促しはNG!」

 

これ、本当に事業所職員、大人に多くて、私は研修でいつものように指摘しています。

 

私は「権利剥奪型指示」と名付け「○○しないと○○できない」ということを辞め、「権利付与型指示」→「○○したら○○できるよ」と言い換えてください。と教えています。

 

おそらくこのような罰を与えるよと予告する指示の仕方は、その人自身が子どもの頃学んできたのだろうと思います。

 

また、宗教といった思想から善悪を学ぶ時にも、やはり即効性のある罰が優先されるのです。

 

つまり、私たちは、思想・文化的にも、学修・経験的にも罰を用いて他者を統制しようとすることを当たり前と捉えているのです。

 

ですが、行動分析の知見からは、罰を使う行動統制は副作用が多々報告されているし、心理療法の観点からも不健康な子どもの心理を形成する可能性があることが示唆されています。

 

また、養育や支援の法的な観点からも、罰やその予告をすることは、場合によっては虐待に繋がることが示されています。

 

行動分析学創始者であるスキナーは、罰・嫌子の無い社会を理想としました。

 

あくまで理想ですし、罰は私達が意図しなくても自然社会に普通にあることです。

 

けれど、私達大人は、罰や嫌子ではなく、報酬や好子を用いて子どもや他者のよい行動を形成したり、モチベーションを高めたりすることができる、ということを知り、自らの考えを変容すべきです。

 

私は、他者から与えられる罰が少なくても指導・教育がうまくいくように、行動分析の知見が多くの人に行き渡るといいなという思いを、社内研修や外部連携で伝えていきたいです。