たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(504冊目)木村順『育てにくい子にはわけがある 感覚統合が教えてくれたもの』☆☆☆☆

一番気に入ったことば「「親」の役割と「職員」の役割」

 

 

著者は述べます。「『職員』は、『親』の立場には立てないし、立ってはいけない」と。

 

『職員』は嫌になったら仕事を辞めることができるが、『親』は子育ての義務から逃れられない。

『職員』は給料をもらっているが、『親』は無給で働いている。

『親』は無資格、無試験でなれるから、我が子を可愛く思う義務はないし、子育てが下手でもいい(子育てをしていれば基本的な義務は果たしている)。

『職員』は正しく保育・教育・療育をしていく義務がある。そのために「発達的視点」や「療育的視点」を学んでいく努力が必要になる。

『親』は自分の個性に合った自分らしい子育てをしていく権利がある(親の数だけ育て方がある)。

『親』は楽しく子育てに向かうためのアドバイスを受ける権利がある。

『職員』は「親指導」ではなく「親支援」を行う義務がある。

 

私の会社でも親支援ではなく、親指導をしようとする職員がいます。

ああしたほうがいい、こうしたほうがいいと教えることが正しいと思っているのでしょう。

私は、親の養育が不十分なとき、あるいは家庭で療育、療育的関わりを行ってもらう場合、まずは親御さんがどのような困り感を持っていて、どんなことをやっていて、どのようなことならできるのかを聞き取りながら情報を提供します。

 

この本は感覚統合療法の基本的な考えを理解することができます。また、5章の「教育・保育・療育現場の方々へ」は著者から支援者へのアドバイスが沢山載っています。発達障害を抱える子に関わる教育・保育・療育に携わる方々に読んでもらいたい一冊です。