たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

(494冊目読了)中川信子『Q&Aで考える保護者支援』☆☆☆

一番気に入ったことば「援助する(つもりの)側の人に多く見られる相手を支配したい気持ち」

 

私の親戚に看護師をしている方がいて、その方は所謂教育ママ的な人でしつけに厳しく「大人の言うことを聞く子がいい子で、大人の言うことを聞かない子は悪い子」という表現をちょくちょくしていました。

 

小学生3年4年生の頃、私は不登校でした。学校に行かない私は、親戚や両親から「悪い子」で「社会的不適合者」、「病気」や「狐憑き」とまで言われました。精神病院に連れていかれそうにもなりましたが、約30年前当時の小学生の私の精神病院のイメージは、恐ろしい精神異常者が行く所(あくまで30年前の小学生のイメージです)だったためかなり拒否した記憶があります。

30年前はまだ発達障害の知識は広く知られていませんでしたが、もし今なら私はなんらかの発達障害精神疾患の診断がついていたのではないでしょうか。

 

その親戚の方は、言うことを聞く自分の子は「いい子で」私は「悪い子」だったようです。直接的にも間接的にも色々言われましたね。

 

学校の先生にもあまり恵まれず、小学生当時の私の主観では、子どもを統制・支配することに喜びを感じる方ばかりでした。不合理な理由で叩かれたり、行動を強制されたりすることが多かった印象です。これも30年前は体罰は正当な教育だったため、当たり前のように行われていたという社会的背景があります。

私はその当時から自分に対する体罰も他者に対する体罰も許せなかったです。

 

上記のような経験等から、私は対人援助職を生業とする方には多かれ少なかれ自分の優越感や統制・支配欲のために、弱い人々がいる環境に身を置くことでそれらの欲求を満たそうとする人がいるのだと確信しています。

 

著者の「援助者の支配したい気持ち」への言及があったことに共感したと同時に、はたしてそのような気持ちを振り返られるセルフモニタリングができる対人援助職の方はどれだけいるだろうかと疑問に思い恐ろしくも感じました。

 

 

この本はQ&A方式で、療育・教育現場で保護者支援や保護者対応をする方の質問に著者が答える形式で話しが進んでいきます。

 

著者の幅広い経験と学識による回答はもちろん、著者の常識と柔軟さ、優しさや軽やかさも伝わる文面に、私自身読んでいてうなづいたり考えさせられたりすることが多々ありました。

 

Q&Aで考える保護者支援:発達障害の子どもの育ちを応援したいすべての人に

Q&Aで考える保護者支援:発達障害の子どもの育ちを応援したいすべての人に

  • 作者:中川信子
  • 発売日: 2018/04/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)