一番気に入ったことば「「私自身の価値」は他人が決めていいことではない」
著者が医学畑の人だったので、「見た目が気になる」ということについて
医学的な知見が得られると思って読んでみました。
また、著者は対人関係療法についても造詣が深いようだったので
そのような知見も得られるかなーと期待していました。
しかしこの本は期待外れで、医学的な知見は殆ど皆無。著者が主観的な意見を述べただけの
自己啓発本の類でした。
一般向けのわかりやすい本ですが、僕にとっては子ども騙しのような印象を受けました。
他者の評価を気にし、見た目を気にすることで自尊感情を損なっている人や、
あるいは摂食障害、身体醜形障害、社交不安障害といった精神疾患を抱える人(とその予備軍)を対象に記述しているようですが、
そのような疾患をもつ人と、多少自尊感情が低くても日常生活に支障が無い人や他者からの評価を気にする不安感が強い人について、見た目を気にするのはすべて悪いことのように述べています。
服装やメイクによって気持ちが落ち着くなら、あるいは自尊感情や不安感を代替行動によって補い、
日常生活をなんとかやっていけるスキルを身につけているなら、そのような生き方はありだと思います。
「見た目が気になる」ことへの対処法についても、根拠のない記述ばかりでした。
「自分を肯定しよう」「自分を大切にしよう」「ありのままの自分でいよう」…これらはもちろん、
健康的な精神活動をするうえで必要条件ですが、十分条件ではありません。
それらの格言を述べることは簡単ですが、根拠や具体例、あるいはそう思わせるような論理的な文脈がなければ
読者に納得させることは難しいのではないかと思いました。
社交不安や理想自己、自尊感情、自己効力感なんかの問題をすべて「見た目」として他者評価依存の問題とするのは
面白いアプローチでしたが、ちょっと無理があった、ということですかね。
「見た目」が気になる!症候群(シンドローム)―他人にどう思われるか、とても気になる心から自由になれる本
- 作者: 水島広子
- 出版社/メーカー: 主婦と生活社
- 発売日: 2012/06
- メディア: 単行本
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