本日読了[394冊目]伊藤左千夫『野菊の墓』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「自ら機械のごときものになっていねばならぬのが道徳というものならば、道徳は人間を絞め殺す道具だ。」


恋愛小説の金字塔の一つです。


読み方によっては、明治から大正時代の恋ごころと現代の恋心の差異との共通点、あるいは感覚(純粋性)と社会常識(認識)との対比を考えさせてくれるでしょう。


野菊の墓に続く、『隣の嫁』と『春の潮』で一つの連続したストーリーを構成しようとしている集英社の短編集がオススメです。




野菊はそれほど美しい花ではない。たぶん多くの人を魅了するほどの花ではない。


現代でも、野原に咲くタンポポシロツメクサなどのありふれた花に心を留める人がどれくらいいるだろうか。


美しき恋も、春に咲く多くの花の一輪にすぎない。


僕の悲しき恋も、他人にとっては見過ごされてしまうような一輪の花でしかないのでしょう。


喧騒に道端の咲く春色に立ち留まる人そこにありなむ



野菊の墓 (集英社文庫)

野菊の墓 (集英社文庫)