一番気に入ったことば「現代アートには、知識が求められることがある」
美術、特に現代アートに対して、興味はあるけどイマイチ良さがわからないんだよなぁー。と思っている人に超お勧めです♪
僕自身美術に興味があるものの、作者や歴史の知識があまりあるわけではなく、たまに美術館に行って現代アート作品に触れても、美しさや「感性」の惹起が感じられることなくスルーしてしまう。あるいは素人を突き放した作風に不快感さえ感じることもままありました。
現代アートは美術の知識豊富な一部の人々のためだけに作成されたものなのか?感性ではなく、知識で味わう美術なんてツマラナイ。そう思っていました。
著者は素直な意見で現代アートの疑問を受け止め、現代アートの鑑賞が作者や一部のマニアのみのものではなく、美術に興味のある全ての人に開かれていることをあらためて教えてくれます。
この本を読んで、現代アートの作者はやはり僕が考えていたように単純に感性に訴えることよりも、むしろ「何これ?」「変なの」というところから考えさせられるような鑑賞を推奨しているものが多いのだと実感しました。
でもその単純な疑問こそが、そしてそれに対する自分の思考こそが現代アートの面白さなのです。
美術の楽しみ方には、「あわれ」(心的情趣)と「おかし」(知的情趣)の二つがあり、現代は後者に訴える作品が多いということです。
実は現代アートの殆どは、時間や空間、そして現代社会を認識してれば十分楽しめる。もちろん知識があればもっともっと楽しめるようになる。と思います。
この本で例に挙げている作品も秀逸です。
「美術としての良さがわからない」の代名詞ともいえる「ピカソ」やリアルかつ違和感を覚える「マティス」抽象画の先駆けともいえる「カンディンスキー」など有名どころをしっかり押さえつつ、それらの作品に対する疑問の呈示と答えの流れ、そしてそれぞれの作品の繋がりへと進んでいく構成。わかり易い言葉で読者の美術への関心を惹起してくれます。
なんとなくわかったつもりになっていたけれど、不安だった。でもそれでいいのだと教えてくれた著作です。
あらためて美術史や作家について学びたくなったし、今すぐに美術館に行きたい!と思いました。
- 作者: 藤田令伊
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/03/17
- メディア: 新書
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