本日読了[282冊目]ユクスキュル・クリサート/日高敏隆・羽田節子訳『生物から見た世界』☆☆☆

一番気に入ったことば「環世界」



実験心理学でも、とりわけ知覚心理学は生理学に近いと思われますが、それらは機械論的人間観に陥り易いと思います。


最近だと(脳科学者の全てがそうだとは言わないけれど)脳科学者が人を有機的機械として説明しています。


昆虫や動物は一見、外界の単純な刺激に対して反射を起こす機械のようにも思えますが、人間もその延長線上にあるのでしょうか。


私たちは自分にとって意味のあるものと意味のないもの、あるいは以前に出会っているかそうでないかによって、知覚される情報が変わってしまいます。


例えば外出時に出会う多くの人はただの他人であり、どんな人とすれ違ったかなんて気にも留めないし、すぐに忘れてしまうでしょう。しかし知り合いとすれ違うと、多くの人の中からでも一瞬で特定され、出会った場所を覚えてしまうことがあります。


僕の場合、沢山人がいるところで知り合いと出逢っても気づかず、後から不満を言われることもあるのですが…


ユクスキュルの場合は、陶器の水差しが、ガラスのデキャンタに変わっていて、目の前の水差しに気付かなかったというエピソードを述べています。


このように外界にある特定の「意味」に対して、動物も主体として反応しているというのがユクスキュルの主張です。


ダニやハエ、鶏やカラスなど、様々な動物種の実験を元に構成されるユクスキュルの主張は、昆虫や動物の豊かな世界を垣間見せてくれます。


しかしふと、森羅万象は物理事象の現れであり、意識や意味などは人間がそれを欲してしまうことから推論された幻想のようなものかもしれないと思うこともあります。


問題は「有るか無いか」だけではないようです。



生物から見た世界 (岩波文庫)

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