一番気に入ったことば「大概の人はいい加減に恋して、いい加減に結婚するのだね。それが又利口らしい。」
恋と友情の話。この本ではどちらの描写も内面世界が中心です。
情景描写と登場人物の性格特徴がはっきり描かれているせいか、とても明瞭な印象を受けました。
主人公野島の片思いの感じにすごく共感してしまいました。
相手の些細な仕草や笑顔に幸福な気持ちになったり、他人と自分を比べ不安になったり、気を引きたい、でも軽薄に見られたくないと変なプライドをもってみたり。そして好きな人に思いが伝わらないことを悲しんだり。
好きな人と親友を同時に無くす経験は、とても淋しい気持ちになります(経験済みです)。どんなに楽しいことを考えようとしてもうまくいかないし、怒ってみても、憎んでみても次から次へと悲しみが湧いてきます。
「自分は淋しさをやっとたえて来た。今後なお耐えなければならないのか、全く一人で。神よ助け給え」
- 作者: 武者小路実篤
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1947/12/29
- メディア: 文庫
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