一番気に入ったことば「汚くてずるくて身勝手なことがよそでどんなに横行しても、自分が見る部分にさえそれが入ってこなければそれでいい。」
最初は真面目でいじらしい真奈が可愛いなと思っていたのだが、読み進めていくうちに我儘で、良くない意味で子どもだなぁと感じるようになってしまった。それに対し不満を言いながらも人に優しくしたり、他者に流されているとしても我慢して受け入れる秋庭は大人に見えた。
著者あとがきにある「上手に書こう」というより「書きたいように書こう」という言葉から「上手に書きたいと思って書いた」という本心が見えた。十分上手に書けていると思う。娯楽として引き込む魅力や適度な情景描写も合格点だと思う。(って上から目線ですね、すみません(^_^;))
僕の場合近しい友人のお勧め、または友人の好きな作品に触れるときにはどうしてもその人のイメージみたいなものが先入観として入ってきて、「ここは彼(彼女)ならどう感じるのだろう」とか「こういうところ彼(彼女)は好きなんだろうなぁ」とか考えてしまいます。
有川浩に関してはそのような近しい友人がいないので何も先入観がなかった。あまり考えずにただ流されるように小説を読みたい気分だったのです。
もしかして読み違えているかもしれないのですが、塩化して有機的活動をしなくなる過程は痛くも苦しくもなく、完全に塩化するまでの間に死の恐怖があるだけのようで、なんて理想的な死に方だろうとも思った。
塩化した人間がこの上なく美しいもののように感じました。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/01/23
- メディア: 文庫
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