たいやきさんは本を読む

臨床心理士・公認心理師の読書ブログ

石川明『はじめての社内起業』☆☆☆

一番気に入ったことば「ある程度「非合理を承知」でいなければ、新規事業は始まらない」

 

この本は私自身が社内で新規事業を興す上で必要と思い読みました。

 

本書は著者がリクルート社での経験を元に、新規事業を始めるために必要な心構えと考え方が記載されています。ただし、具体的に自分の会社、事業に落とし込む為にはある程度読み替えが必要だと思いました。

 

新規事業を計画する者がどのような知識と戦略をもって上司や経営者に訴えるかが学べると思います。

 

 

はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

 

 

 

 

 

読了[484冊目]糸川昌成(監修)『統合失調症スペクトラムがよくわかる本』☆☆☆

一番気に入ったことば「「脳」だけではなく、「心」の治療も大切」

 

会社で統合失調症の診断のある方と話す機会があったため、短時間で基本的なことを学ぶために読みました。

 

100頁ほどの薄い本で、イラストもありサクサク読めます。基本的なことがしっかり理解できます。

 

この本は2018年に出版されたもので、DSM5の診断基準など、比較的新しい情報に基づいたものであるため、信頼できると思いました。

 

統合失調症スペクトラムがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

統合失調症スペクトラムがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

 

 

読了[483冊目]小笠原恵(編)『「行動問題」解決ケーススタディ』☆☆☆☆☆

 

一番気に入ったことば「周囲の人からみてちょっと奇異にうつるかもしれませんが、その子なりに楽しみをもっていることは大切なことでもあるのです」

 

応用行動分析の学習、発達障害を抱える子どもの行動問題への対応のための学習として読みました。

 

非常に読みやすく応用行動分析による行動問題への対応方法を学べるだけでなく、その背景にある著者の(方々の)子どもに対する優しさや倫理観も学べる良書です。

 

特によかったのは機能分析をする際に「その子が何を考えているのか」「その子の気持ちはどのようなものか」といった、対象者の視点に立ち問題となる行動の意味を考えるところです。

 

私自身行動問題への対処法を考えるときにはもちろんその子の障害特性や性格を考慮するのですが、忘れないようにしたいのは第一にその子の気持ちや利益に配慮することだと思うのです。

 

 

 

 

 

 

 

読了[482冊目]津川律子他著『心理臨床における法と倫理』☆☆☆

一番気に入ったことば「子どもの特徴の十分な理解と職員間の共通認識がなければ職員が「力による支配」に頼ってしまい、結果として新たな権利侵害が生じてしまう可能性がある。」



この本は放送大学大学院文化科学研究科のテキストです。


心理臨床の現場には、教育、司法、医療・福祉など様々な領域があります。
また、子ども、家族、高齢者、勤労者の心理的健康や、精神疾患の治療などにカテゴリ分類もできます。


もちろん、総合的な心理臨床のテキストにあるように、
実践と研究の倫理や命に係わる事柄についても章分けをし述べられています。


それらの領域、カテゴリに分けて法と倫理についての学習ができるのがこの本です。


公認心理士試験に向けて個人で読んだのですが、本来であれば各章末にある「研究課題」について
他者と議論することで理解が深まるだろうと思いました。


心理臨床における法と倫理 (放送大学大学院教材)

心理臨床における法と倫理 (放送大学大学院教材)

読了[481冊目]平岩幹男『自閉症スペクトラム障害 −療育と対応を考える』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「ほめることは、技術と経験の蓄積と習慣です」


この本はASDの療育について非常にコンパクトにまとまっています。


基本的にはご家庭向けですが、専門家がASD療育を俯瞰するためにも役立ちます。


幼児期の療育方法、TEACCH、ABA、PECS、DTT、VB、PRT(他にもあります)について簡単な説明がなされています。


発達障害の基礎知識から、療育、行動問題への対応、二次障害、SSTや就労に向けての視点など、
短い時間で信頼できる情報が得られるでしょう。


自閉症スペクトラム障害――療育と対応を考える (岩波新書)

自閉症スペクトラム障害――療育と対応を考える (岩波新書)

読了[480冊目]ロバート・L・ケーゲル他著『発達障がい児のための新しいABA療育 PRT』☆☆☆☆☆

一番気に入ったことば「ピボタル領域」


pivotalとは、枢軸の、中枢の、重要なという意味です。


PRT(pivotal response treatment)はABAを基本とし、ケーゲル夫妻(お二方ともに博士)が開発した方法論です。


主にモチベーションと行動の自発性に着目した介入方法を提案しています。


私自身も非常に共感する考え方であり、適応的行動の学習効果を高めるためのヒントが沢山ありました。


私自身が療育をするうえで大切にしている信念は…

一番大切なのは本人が楽むこと!
やらせる学習ではなく、本人が自発的にやる学習を提供する。そのための工夫をする。
構造化された環境でのみできる行動よりも、日常的な環境で般化できる行動を身につけてもらうようにする。
罰は基本使用せず、報酬を使用して学習してもらう。
ネガティブな声掛けをせず、ポジティブな声掛けをする。そのために、ポジティブな面に着目したり、リフレーミングを行う。


ABAの基礎を学んだ人は、応用としてPRTの理論や方法論を学んで損はないと思います。


PRT 〈Pivotal Response Treatmentの理論と実践〉: 発達障がい児のための新しいABA療育

PRT 〈Pivotal Response Treatmentの理論と実践〉: 発達障がい児のための新しいABA療育

  • 作者: ロバート・L.ケーゲル,リン・カーンケーゲル,Robert L. Koegel,Lynn Kern Koegel,小野真,佐久間徹,酒井亮吉
  • 出版社/メーカー: 二瓶社
  • 発売日: 2016/09/20
  • メディア: 単行本
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読了[479冊目]山口真美『発達障害の素顔』☆☆☆

一番気に入ったことば「最新の研究から、社会性にかかわる脳の部位には(…)4つのネットワークから構成されていることがわかってきた。」


この本は、(私の師匠の師匠)山口先生の専門である視知覚の研究を主軸としながら、発達障害に目を向けた場合に見えてくる研究知見をまとめたものとして構成されています。


読んでいて、先生は発達障害に関しては門外漢であるけれど、最近発達障害に関する心理学・脳科学研究が進んできたことに興味をもって、それらをまとめたという印象です。


なぜそのような印象を受けたかと言うと、山口先生の研究や経験の話は部分的で、殆ど他者の著書や研究による知見に則って構成されているからです。


発達障害の研究・支援をしている人に役に立つかは微妙ですが、発達障害の研究を知るための副読本としては役に立つかもしれません。


私自身は教科書で学んだことの復習や研究ベースで発達障害に目を向けるためのきっかけになったと思います。